【永田法】詳しい手術解説
1回目手術(耳垂残存型の例)
肋軟骨採取
- 1皮膚と脂肪を切開して、脂肪の下を広く剥離し、外腹斜筋と腹直筋を露出します。
- 2外腹斜筋と腹直筋の間を切開します。
- 3 4肋間筋と第6~第9肋軟骨の肋軟骨膜を露出します。
- 56肋軟骨膜の中央に線を引いて、メスで肋軟骨膜を切開します。
肋軟骨膜剥離子「アッシュ5番」を用いて、肋軟骨膜の表を剥離します。 - 7肋軟骨膜の裏側まで、全周を剥離します。
- 8第8番、第9番の肋軟骨を持ち、肋軟骨と肋骨のジャンクションのわずかに肋軟骨寄りを、肋軟骨カッターで切開採取します。
- 9第6番、第7番肋軟骨は両者が癒合して、一つになっている場合があります。そのような場合はひとかたまりとして摘出します。
- 104本の肋軟骨を摘出した後、肋軟骨膜は全て、開いて残されています。
- 11開いた肋軟骨膜の中央部を除いて、4-0白ナイロンを使って5㎜間隔で縫合します。
- 12133次元肋軟骨フレームを作成、残った肋軟骨を米粒大(2~3㎜大)にみじん切りにして、肋軟骨膜の中が満タンになるまで入れ戻します。
- 14肋軟骨膜の縫合を全て行います。
- 1516肋軟骨膜の中に自分の体液が貯留し、その中で新たに肋軟骨が再生されます。そのため従来法のように肋軟骨採取後に胸郭陥没変形が起きることはありません。肋間神経にマーカインを注射し、肋間神経ブロックを行いますので、筋体を縫合し、創を閉鎖すると術後の痛みも軽減されます。
↑一連の流れの図↑
フレーム作成と固定
- 1採取した肋軟骨でパーツを作り、ベースフレームを組み立てます。
- 2耳輪のパーツをベースフレームに固定します。ワイヤーのループ部分をカットして、表に露出しないように肋軟骨の中に埋め込みます。
- 3上行脚、下行脚、対輪、耳珠、耳甲介のパーツをベースフレームに固定します。
- 4肋軟骨フレームの実際と、斜め前方、前面、後面などいろいろな角度から見たところ。
フレームの作り方の実際
- 14本の肋軟骨を採取します。
- 2パーツを作成して、これらを組み合わせて耳の形を作ります。
- 3基礎のフレームの上に耳輪脚、耳輪を組み合わせます。
- 4対輪、上下行脚のパーツを組み合わせます。
- 5耳珠を組み合わせます。
- 6耳甲介部分をべースフレームの後ろから取り付け、完成した永田法の3次元肋軟骨フレームです。
- 73次元肋軟骨フレームを裏から見たところと型紙。
耳垂残存型小耳症の1回目の手術
- 1点線が耳介を再建する場所です。実線が耳垂前面の切開線になります。
- 2耳垂後面から乳突胴部にかけて、W型の切開線をデザインします。耳介が存在するはずの場所よりも外側に5㎜の場所を、W型切開線の端とします。
- 3耳の形になる4枚の皮弁(耳垂前面皮弁、耳垂後面皮弁、耳珠用皮弁、乳突洞部皮弁)を作ります。
- 4・残っている耳介軟骨は全て取り除きます。
・軟部組織を切除して、骨膜を露出させます。
・骨膜を半円形に切開して、hinge flapとして下方に折り曲げ、耳下腺の軟部組織に縫合します。露出した骨膜をburrで削り、深くします。
※浅側頭動脈がこの部分に存在する場合、この操作は行えません。 - 5耳介があるべき大きさよりも外側1㎝まで皮下剥離を行って、皮下ポケットを作ります。
- 6・耳垂後面皮弁と乳突洞部皮弁の間から、点AとBまでを縫合すると、陥没皮弁(C)が形成されます。
・耳垂後面皮弁の下半分と、それに連続する乳突洞部皮弁の一部は剥離せず、皮下茎皮弁とします。
※この部分を剥離せず残すのは、血行上皮弁の安全のため必須であり、この手術のキーポイントとなります。
上の図のA、B、C、D
イラストのように皮下茎部を中心に、3次元肋軟骨フレームを耳珠部から回転させながら、皮下ポケットの中へ挿入します。
- 7皮下ポケットの中に、3次元肋軟骨フレームを挿入した状態。
- 8・耳垂前面皮弁と耳珠用皮弁を後方へ移動させて、縫合します。
・スムーズなU字型の珠間切痕にするため、耳垂前面皮弁の茎上部を半径2㎜ほど丸く切除し、U字型皮弁と縫合します。このとき、茎(pedicle)部の幅を8㎜以上残して、耳垂前面皮弁の遠位端(distal)部分の壊死を起こさないようにします。
・皮弁縫合途中で、耳輪と対輪の間から皮下に18ゲージの点滴用外筒を挿入して吸引(suction)を行い、耳介全体の輪郭が浮かび上がったのを確認して、縫合します。 - 9耳輪前方で遺残耳介の余った皮膚を切除します。血行の安全性のため、できるだけ縫合線が水平に近くなるように切除します。
上の図のE、F、G
・耳介輪郭の陥凹部から、耳輪外側周囲へ向かってボルスター縫合を行います。
・ロール状ガーゼにゲンタマイシン軟膏を十分に塗り、ボルスター縫合固定を行います。
・その後、吸引チューブを抜きます。
※タンザー法やブレント法などの従来法と異なり、3次元肋軟骨フレームを覆う皮膚の表面積が十分に広く用意されている永田法では、皮弁に張力がかからず安全にボルスター縫合固定が行えます。ただし耳輪内側のボルスターロール状ガーゼの直径は3㎜程度に細くします。
上の図のH
再建された耳介を保護するため、レストンスポンジをイラストのように丸く切り、再建耳介の周囲に付着させます。
上の図のI
・ゲンタマイシン軟膏を再建耳介に塗り、トレックスガーゼを乗せ、1枚のさばきガーゼをかぶせた上に、6枚のガーゼでレストンスポンジを覆い、テープで固定します。
・さらにネットをかぶせ、顔面と反対の耳介を外に出して手術は終了です。
↑一連の流れの図↑
2回目手術(耳垂残存型の例)
肋軟骨ブロックの形成
再建した耳介の後ろを支えて立てるための半月状の肋軟骨ブロックを作ります。
両側小耳症では再建耳介と同じ側の第4、5肋軟骨を採取して、肋軟骨ブロック作成の材料にします。
片側小耳症では、反対側の第6、第7肋軟骨を使います。
- 1肋軟骨ブロックの作成はベースフレーム上に2個の肋軟骨を重ねて、厚さ14㎜にして作成します。
- 2P図3の設計図に描いている半月上の部分から、肋軟骨ブロックの部分を切り取り、型紙を作成します。
- 2B型紙を採取した肋軟骨の上に乗せて、ベースフレームを作成します。
- 45ベースフレームの上に肋軟骨ブロックの一つを重ねて、38ゲージステンレスワイヤーで固定します。
- 6789さらにもう一つの肋軟骨を重ねて、同様にワイヤー固定をして、肋軟骨ブロックを完成させます。図6は肋軟骨ブロックのイラスト。図7は肋軟骨ブロックを斜め前方から、図8は真横から、図9は斜め後ろから見たところ。ワイヤー固定数は計20針です。
耳垂残存型小耳症の2回目の手術・耳立て手術
- 1・頭皮分層皮膚を採取するため、葉っぱの形(紡錘体、スピンドル型)のデザインをします。
・再建した耳を側頭部から立てるため、耳輪の周囲を切開します。このときTPFを挙上するため浅側頭動脈を含むように、また頭皮切開部を目立たなくするため、毛流を考慮したジグザク切開を行います。
- 23側頭部の皮膚を15番メスを使い、分層で採取します。
- 4耳介後部の側頭部より採取した頭皮分層皮膚です。
- 5ジグザク切開により、皮弁を挙上してTPF表面を露出させます。
- 6再建した耳介周囲より、4㎜外側で切開します。
- 7毛髪部は毛根を含まないように、分層皮膚を耳輪の頂点まで挙上させます。
- 8TPFを挙上します。
- 9・再建した耳介を側頭部から剥離して、挙上します。
・挙上するとき、再建した耳介後面に軟部組織を十分に付着させ、肋軟骨フレームが露出しないように注意します。 - 10耳輪の周囲の毛根部を切除します。
- 11側頭部の皮下を剥離します。
- 12TPFを耳介の直前から引き出し、皮弁を縫合して閉じます。
- 13・健側の耳介が30度の角度で立っている場合、角度を合わせて耳を立てるためには、厚さ14㎜の肋軟骨ブロックで耳介を後方から支える必要があります。そのため少なくとも2本の肋軟骨を採取し、1本の肋軟骨で広い半月状のベースフレームを作成します。
・残ったもう1本の肋軟骨を2ブロックに加工し、ベースフレームの上に別々に乗せて半月状になるように重ねます。
・38ゲージのステンレスワイヤーで約20カ所固定します。
・作成した肋軟骨ブロックを下から見たとき、イラストのように逆L字型(=耳介が強固に安定して立った状態を保つために必要な形態)になるように作ります。
※1本だけの肋軟骨ブロックを用いてこの形を作ろうとしても、厚さが7㎜しか形成できないため、左右対称に立てることは不可能です。 - 144-0白ナイロンを用いて、再建耳介後面と側頭部乳突洞部の軟部組織に半月状肋軟骨ブロックを4㎜間隔で密に縫合固定します。このときに再建耳介がグラグラせず、しっかり立って動かない状態であることを確認します。
- 15TPFで耳輪の頂点から再建耳介の後面、耳介を挙上したことで陥凹している側頭部および乳突胴部までの部分を覆います。
- 16・側頭部皮膚を矢印のように上から、下から引き寄せるように縫合します。
・毛髪内で余っているドッグイヤー部を切除します。 - 17TPFの上に、頭皮分層皮膚を移植します。
- 18タイオーバー固定を行って、手術は終了です。
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